ビザンツ帝国の分裂
帝国の系譜
西洋の皇帝

皇帝とは何ぞや?という質問に対して、多くの方は「王様より偉い人」という答えを出すだろう。それは正しいのだが、西洋においてはそれだけではなく「ローマ帝国皇帝を受け継ぐもの」という意味がある(東洋では違う) エチオピア帝国やマリ帝国、大英帝国など、一部ではローマ帝国とは関係のない皇帝も存在するが、ほとんどの皇帝はローマの系統を受け継いでいる。 もちろんビザンツ帝国もローマ帝国を受け継ぐ…というよりも、ローマ帝国分割統治のさいに残された帝国なので、まぎれもなくローマ帝国そのものである。
他の帝国にはどのようなものがあるのか系譜を見てみよう。
東洋の皇帝
東洋における皇帝とは、中国皇帝のほかにならない。秦の始皇帝が皇、帝、王、公よりも高い位として作ったのが始まりとされる。その為、皇帝とは中国皇帝のみをさす。 だが、日本や韓国のように、中国皇帝に対抗する為に「皇帝(天皇)」を名乗ったほか、世界最大の帝国であるモンゴル(元)の皇族が、皇帝位の資格ありと、名乗ったものもある。

十字軍時代の東ローマ帝国
十字軍の時代、ビザンツ帝国はイスラム教国の侵攻を受け、
帝都コンスタンチノーブルの陥落や、十字軍の侵攻を受けて幾たびか分裂した。
そのため、各地に皇帝が乱立する事態へと陥った。
ニケーア帝国、テッサロニキ帝国、トレビゾンド帝国など、いずれも東ローマ帝国ではあるが、
どの血統が皇帝となっているかは、今ひとつ分かりにくい。
そこで、 家系図を見ながら、どの帝国(or皇位)が、どの系統の人物の手にあるか見てみよう。
<家系図製作には家系図ツールズを使用しています>
コムネノス王朝 十字軍時代のビザンツ帝国の根幹を成す王朝。コムネノス王朝初代皇帝イサキオス1世がローマ教皇に救援を求めたことから十字軍が始まった。 斜陽の帝国とは言え、統一期にあるため、権勢を保とうとフランスやベルギーなど、諸外国から妻を娶っている。 ルームセルジュークなどのイスラム諸国の侵攻によりビザンツは疲弊していったが、ビザンツの国力も低くなく、また有能な皇帝も多く存在した。 その中でも軍事皇帝マヌエル1世などは「ローマ帝国復興」を夢見て、度々外征や大規模事業を行った。

初代皇帝:アレクシオス1世コムネノス
二代皇帝:ヨハネス2世コムネノス
三代皇帝:マヌエル1世コムネノス
四代皇帝:アレクシオス2世コムネノス
五代皇帝:アンドロニコス1世コムネノス


アンゲロス王朝 失政により惨殺されたアンドロニコス1世より皇位を継承したイサキオス2世アンゲロスが立てた王朝。 イサキオス2世は弟アレクシオス3世に皇位を奪われたが、息子アレクシオスが十字軍の協力を得て 弟イサキオス2世を倒し、父子による統治が始まった… ここで終われば、英雄譚で終われるのだが現実は甘くなく、協力した十字軍に対する支払に財政は圧迫し、 重税をしいたため国民は怒り、父子共に殺害されてしまった。 どうにも政治的に有能な人物がいないのが、アンゲロス王朝の特徴だろう。 棚から牡丹餅式に、皇帝となったアレクシオス5世であったが、第四次十字軍による帝都攻撃に恐れをなして逃亡、 急遽、帝都防衛司令官コンスタンティノス・ラスカリスが皇帝に選ばれたが、ほとんど何もしない内に帝都は 落とされ、アンゲロス王朝は滅び去ってしまった。

初代皇帝:イサキオス2世アンゲロス
二代皇帝:アレクシオス3世アンゲロス
三代皇帝:イサキオス2世アンゲロス
四代皇帝:アレクシオス4世アンゲロス
五代皇帝:アレクシオス5世ドゥーカス
六代皇帝:コンスタンティノス・ラスカリス

ニカイア帝国 兄コンスタンティノスと共に帝都から脱出したテオドロス1世がニカイアにて建国した帝国。一族の名からラスカリス王朝とも言う。 皇位は兄であるコンスタンティノスより譲り受けた。卓越した手腕を発揮し、帝国再興の中心国家として活躍した。1261年に帝都を奪回しビザンツ帝国を復活させた。
初代皇帝:テオドロス1世ラスカリス
二代皇帝:ヨハネス3世ドゥーカス
三代皇帝:テオドロス2世ラスカリス
四代皇帝:ヨハネス4世ラスカリスス

トレビゾンド帝国 帝都陥落後に分裂した帝国。コムネノス王朝最後の皇帝アンドロニコス1世の 孫が「自分こそ正統なる皇位継承者である!」としてアナトリア半島の東北トレビゾントで独立した。 偉大なるコムネノス”メガス・コムネノス”王朝と称した。当初は黒海を制覇する勢いであったが、最北端はイスラム諸国との戦いの最前線であり、 攻勢に出られると独立領を守るだけ精一杯となってしまった。そのご大したことも出来ずに滅びてしまったが、最後のローマ帝国(系列の国家)として建国から250年(滅亡は1461年)も続いた。

初代皇帝:アレクシオス1世"メガス"コムネノス
二代皇帝:アンドロニコス1世ギドン
三代皇帝:ヨハンネス1世"メガス"コムネノス
以降続く…


テッサロニキ帝国 帝都陥落後にドゥカス一族が建国した帝国。当初はエピロス専制公(ビザンツ帝国に存在した皇帝の次の位。嫡男などが就任していた)として就任した。 ラテン帝国(十字軍によって建国された帝国)の皇帝を捕縛したり、テッサロニキ王国を滅ぼすなどの活躍をみせ、帝国と称した。 一時期はニカイア帝国と同じ勢力を持っていたが、ブルガリア帝国に敗北してから勢力は衰えてしまった。最終的に独力による帝国復興をあきらめ、ニカイア帝国皇帝より正式に「専制公」の称号を受け取ると、属国として存続した。

初代専制公:ミカエル1世コムネノス・ドゥーカス
初代皇帝:テオドロス1世コムネノス・ドゥーカス
二代皇帝:マヌエル
三代皇帝:ヨハネス
五代専制公:デメトリオス
六代専制公:ミカエル2世アンゲロス・コムネノス
以降続く…

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